会話成立へ①日常での取組

息子は、2歳後半で、ABA療育の中では、物+動詞や人+動詞の二語文を話すことができるようになりましたが、日常生活の中では、要求語(一語文か二語文)しか話すことができず会話は全くできない状態でした。
そこで、息子が3歳になる直前から、息子の言語能力を会話ができるレベルまで上げることを目指し、日常の取組みとABAの訓練を同時並行で進めることにしました。
結果的に、息子が3歳10ヶ月になった頃、ようやく、息子と簡単な言葉のやりとりができるようになりました。
今回の記事では、日常で取り組んだ内容について記したいと思います。

〇日常での取組
私は、父親の仕事の都合で幼稚園卒園後、1年半の間、アメリカで過ごしましたが、その間、クラスメートや近所の友達(家族以外では日本人は1人もいない状況)に囲まれた生活を送りながら言葉(英語)を短期間で発達させたという経験をしていましたので、「言葉は生活の中で覚えるもの」との思いが強く、息子にも生活の中でどんどん言葉を使わせることによって言語力を少しでも上げたいと思っていました。今小学生の息子のコミュニケーション能力は、残念ながら健常にはまだほど遠いレベルですが、発達検査の言語のIQは、3歳時より5歳時の方が高くなりました。
早期から療育を続けているにもかかわらず、なかなか健常児のように言葉を話せるようにならないといった状況になっても、生活の中で年齢に応じて最低限必要な言葉のやりとりができるよう努力を続けていくことは本当に大切なことだなと実感しています。
それでは、以下が日常で行った取組みの内容になります。

1.名前・性別・年齢の質問に答えさせる
息子が3歳になる直前から半年ほどの間、生活の中で、以下のやりとりをする練習をしました。

・「お名前は?」→「〇〇 〇〇です。」
・「〇〇君は男の子ですか女の子ですか?」→「男の子です。」
・「〇〇君は何歳ですか?」→「3歳です。」

息子が3歳7ヶ月のときに受けた発達検査(新版K式)では、運動面を除けば、全体的に知的障害レベルの点数でしたが、名前・性別・年齢の質問については、きちんと答えることができ、検査員に「今日は、ここだけをチェックしたかったと言っても過言ではありません。」と言われました。3歳半くらいになると言葉が遅れていたとしても、せめて名前・性別・年齢だけは答えられるようにしておいて欲しいということなのだと思います。
ちなみに、息子のこのときの発達検査のDQは、総合で71でした。名前・性別・年齢の応答の練習をしていなければ、確実に知的障害の判定が出ていたと思われます。

2.日常会話トレーニング
息子が3歳3ヶ月のときから4歳になるまでの間、生活の中で毎日、同じ場面で同じ質問をし、それに答えさせることによって、息子のコミュニケーション能力を高めていこうと試みました。
息子は質問の弁別ができないため、最初のうちは、どの質問に対しても答えを模倣させるかたちで答えさせていましたが、息子は、毎日同じ場面で同じ質問に対して答えるという経験を積むことによって、自力で答えられる質問が徐々に増えていきました。

-日常会話トレーニング-

【起床】
・おはよう → (息子)おはよう

【お天気調べ】
・今日の天気は? → (息子)晴れ(くもり・雨)
 ※最初のうちは、質問する前に窓を開けて外を見せ、「今日は晴れ(くもり・雨)だね」と声をかける。

【パパ仕事】
・いってきます → (息子)いってらっしゃい
・パパどこに行ったの? → (息子)お仕事

【着替え】
・(着る服を見せて)これ何するもの? → (息子)着るもの
・(はくズボンを見せて)これ何するもの? → (息子)はくもの

【手洗い】
・ごはん食べる前は何するの? → (息子)手を洗う
 ※食事の前のみ
・(タオルを見せて)これ何するもの? → (息子)ふくもの

【食事(おやつ)】
・おなかすいた? → (息子)おなかすいた
 ※おなかがすいてごはんを食べたそうにする夕食の前にのみ質問をする。
・おなかがすいたらどうするの? → (息子)ごはんを食べる
・手を合わせましょう → (息子)いただきます
・おいしい? → (息子)おいしい
 ※おやつのときのみ
・コップは何するもの? (息子)〇〇を入れるもの
・お茶碗は何するもの? → (息子)ごはんを入れるもの
・ごはんを食べ終わったらなんて言うの? → (息子)ごちそうさまでした
・何食べたの? → (息子)〇〇食べた

【トイレ】
・何した? → (息子)おしっこ(うんち)した

【お出かけ】
・(靴を見せて)これ何するもの? → (息子)はくもの
・(帽子を見せて)これ何するもの? → (息子)かぶるもの
・(スーパー、公園などで)ここどこ? → (息子)〇〇
・お帰り → (息子)ただいま
・どこに行った? → (息子)〇〇に行った
・誰と行ったの? → (息子)パパ(ママ)

【パパ(ママ)帰宅】
・ただいま → (息子)お帰り 

【遊び】
・誰と遊んでいるの(遊んだの)? → (息子)パパ(ママ)

【お風呂】
・ここどこ? → (息子)お風呂
・誰とお風呂に入ったの? → (息子)パパ(ママ)
・お風呂から出たら何するの? → (息子)パジャマを着る

【就寝】
・誰と寝てるの? → (息子)パパ(ママ)
・おやすみ → (息子)おやすみなさい

3.息子に質問をさせる
「自閉症を克服する」という書籍に「周囲の人に質問させることをしていると少しずつ人に話しかけられるようになる。」といった記述があったので、我が家でも、息子が4歳台のときから日常で「息子に質問をさせる」取組みを始めました。
この取組みを始める前、息子は、「(・・・は)どこにあるの?」の質問は時々してきていましたが、それ以外の質問を自発することはほとんどありませんでした。
そこで、息子に、「お母さんに『何してる?』って聞いておいで」、「お母さんに『何作ってる(料理)?』って聞いておいで」、「お母さんに『お菓子食べていい?』って聞いておいで」、「お母さんに『テレビ見ていい?』って聞いておいで?」・・・などと言って、いろいろな質問をするよう促していきました。
(残念ながら息子が就学するまでにこの取組みの効果は感じられませんでした。)

4.「どうして?」の質問に答えさせる
息子が年長になってから通い始めた病院の療育の先生から何度か、「『どうして?』と積極的に質問をして子供に答えさせるのがいい。」と言われました。
我が家では、息子が4歳台のときから、日常で、適度に「どうして?」と質問して「~だから。」と答えさせるということをしてきたつもりですが、療育の先生から、「言葉(一語文)が出始めた頃から「どうして?」とどんどん質問して答えさせる(最初は答えを模倣させて言わせる)ようにすればいい。」との話もありました。ということで、我が家は、この取組みについては、始める時期がかなり遅れてしまったようです。
現在、息子は、「どうして?」のいくつかのパターンの質問に対しては答えられるようになっていますが、息子には、まだまだこの取組みを続けていく必要がありそうです。

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