発達の遅れを取り戻そうと日常で行った取り組み

私たち夫婦は、知的障害を伴う自閉症の息子が2歳になった頃から、家庭療育を開始しました。息子がほぼ無発語の状態から言葉を獲得できたのは、ABAによるところが大きかったと思いますが、それ以外の情緒、運動、生活の面で2歳から3歳にかけて伸びたのは、日常でいろいろな取り組みを行ったからだと思っています。その取り組み内容を以下に紹介させていただきます。

1.子供ができることは子供にさせる
療育を開始する頃までは、ほぼ何でも親がやってあげるというような状態だったのをできるだけ息子にやらせるようにしました。
例えば、みかんやバナナなどをそれまでは親が皮をむいてあげていたのを息子に皮のむき方を教えて自分でむかせるようにしました。また、食事の際には自分が使うコップ・お皿・スプーン・フォークなどを食卓に運ばせ、食事後はそれらを台所に運ばせるようにしました。

2.情緒面の働きかけ
書籍「2歳で言葉がない子・増えない子『様子を見る』のは危険です」に書かれている治療方法を実践してみました。この治療方法については、とてもシンプルで”笑わせることで情緒発達を促す”といったものです。
我が家では、息子が喜ぶお馬さんごっこ、ハンモック遊び、追いかけっこなどで1日5回以上笑わせるようにしました。こんなことをしていて本当に効果があるのかなと思っておりましたが、やり始めて1週間も経たないうちに遊びをやめようとしたら何度もやるよう催促するようになり、そのうちあまり笑わなかった息子が笑うことが多くなり、数ヶ月経つと明らかに表情が豊かになってきました。表情が豊かになってくると、最初は、ほとんど関心を示さなかったパパやばばに対しても徐々に愛着を示すようになりました。
この取り組みによって情緒的な交流ができるようになっただけでなく、私自身、言葉が話せない、話していることも理解できていない状態の子でも愛情を持って接していれば、その愛は必ずその子に伝わっていくのだということを学ぶことができました。

3.歩行訓練(散歩&山登り)
2歳前の発達検査で運動面の遅れも明らかになったので運動面の克服をしようと、また、歩くことは脳にもいいということも知りましたので、2歳になって間もなく、ベビーカーに乗せて出かけることをやめて、毎日30分以上は散歩などで歩行をさせるようにしました。また、山登りはでこぼこや不規則な段を歩くので歩行訓練にいいと聞きましたので、週に1回4ヶ月程度、家から車で30分ほど離れた山(息子のペースでも30分程度で登ることができる山)で山登りを続けました。

4.目と手の協応訓練
この内容については、別の記事で紹介させていただきます。

5.指差しの練習
息子は、指差しが全くできなかったので、数か月間かけて指差しの練習をしました。指差しの練習は、いろいろな方法があると思いますが、我が家では、製氷皿などを使って行いました。まず、製氷皿におかずを分けて入れて息子の前に置き、息子が欲しいおかずをとろうとして、人指し指がおかずに触れるごとにそのおかずをとって息子の口の中に入れていきました。欲しいおかずをきれいに指差しできるようになったら、今度は製氷皿を息子の人指し指がぎりぎり届く位置まで離し、それでもうまくできるようになったら、製氷皿をお皿数個に換えて練習をしました。スプーンやフォークで食べる練習もしなければならなかったので、この取り組みは、朝食の時だけに行いました。食卓での指差しがうまくなった後は、息子が当時たいへん興味をもっていたシールを数種類、手の届かない壁に少しずつ離した状態で貼っておき、シールで遊びたくなったときに好きなものを指差しさせるようにしていました。

6.マッチング
マッチングはABAの同じもの同士をいっしょにする課題で、言葉を獲得していくために必要な概念を身に付けさせるためのものです。
言葉を覚えていくためには、物事を抽象化し共通性を見出す概念が必要で、例えば、黄色い細長く曲がった物は大きさが多少違ったり、微妙に色が違ってもバナナだと認識し、それを”バナナ”と表出できて、初めて”バナナ”という言葉を獲得したことになります。我が家では、食事が終わった時に同じ柄の茶碗やおわんを”いっしょにして”と言って、息子に重ねさせていました。また、買い物が終わった時に、買い物かごを”いっしょにして”と言って、息子に買い物かご置き場のかごに重ねさせていました。また、青や赤など2色の色紙を並べて置いて、息子に青のシールを青の色紙に、赤のシールは赤の色紙に貼らせる訓練をしていました。

7.まねをする
息子がくるくる回っているときにじじがいっしょになってくるくる回ると喜んだこと、たまたま公園で鬼ごっこをしていた小学生の子とただ単に走っていた息子が並走する状態になったときに息子がその小学生の子と手をつなごうとしたこと(小学生の子が手をつないでくれたら息子は、しばらく手を放そうとしませんでした。)、また、私が療育方針にしている論文にも「こどもの目線に立ってこどもが一人で遊び興じる世界に踏み込むことも必要」との記載があったことから、息子の変わった行動すべてを否定しようとせずに時には、いっしょになって行動をしてあげるということを意識しながら療育を行うようにしました。息子は、毎回、喜ぶわけではありませんでしたが、息子が寝そべっているときにいっしょに横になっただけでもにこっとすることもありました。

8.指示に従わせる
ゴミをゴミ箱に捨てさせることを1番最初に教えました。これは、健常の1歳児であれば簡単にできることでしょうが、息子は手に持ったものをなかなか放さないこだわりがありましたので、課題として行いました。まず、ゴミ箱を息子の目の前に置いて、”ゴミ箱ポイ”と言った直後に手を広げて持っているゴミをゴミ箱に落とす訓練をしばらく行いました。そして、指示どおりにゴミをゴミ箱に自力で落とすことができるようになってから、徐々にゴミ箱の位置を息子から離していきました。ゴミ箱を部屋の定位置に置いても指示に従えるようになったら、次は同じ方法で”お洗濯”の指示に従って、服などを洗濯機に持って行って入れさせる訓練を行いました。

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